自然体になる

働き方を変えていきたいと思ったのは、僕自身が働くことを競争のように捉えていたからです。勉強も運動も標準的で個性のないことがコンプレックスだった僕は、新卒で入社した会社でがむしゃらに働き、2年目には営業成績でトップに立ちました。競争に勝って一瞬は嬉しかったけれど、徐々にがむしゃらな働き方や仕事との向き合い方に疑問と限界を感じるようになりました。周囲から聞こえてくる「この事業はトレンドだから儲かる」「ビジネスチャンスを逃すな」といった言葉に、違和感だけが膨らんでいったのです。

確かに赤字では会社を維持することはできません。「ECのミカタ」を立ち上げた当時は、EC業界に特化したメディアがなかったこともあり、ビジネスモデルとして成立すると考えました。けれど儲けることよりも重要なのは、事業を通して誰かの役に立ちたいという信念です。それがないと続かないしつまらない。

ただ最短で結果を出すために、自分を犠牲にしてでも頑張ってきた僕が社員に教えられることは、結局のところがむしゃらという根性論でした。そうした僕のひずみやMIKATAに関わる人たちのひずみが、簡単にいえばMIKATAに階層構造を生んでいたことに気付きました。こうなったのは、自分も含めみんなが自然体ではなかったからです。仕事だから、社長だからと肩に力が入っていた自分がまずは自然体になると決め、共同経営者であり兄弟でもある敬介さんや社員の皆さんにも納得してもらえるよう何度も話し合いを重ねて、今のMIKATAがあります。